番翁のブログ

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番翁の最長片道紀行 その0・まえがきと説明

まえがき

 目的のない文章は書かれるべきでないし、ましてこのようにブログなどという世に開かれた媒体に公開されるべきではない。それにもかかわらず、私がわざわざ大して美しくもない日本語をここに書き連ねているのは、まさしくこの作文行為に目的があるからに他ならない。

 文章の目的はおよそ他人に読んでもらうことにあり、これは旅行記であっても概ね同じであろうと思われる。しかし他人の旅行記を読むことに意義があるのは、ひとえにその旅行記を参考にすることのできる経験が起こりうるからに他ならないのであって、そういう観点で考えてみれば、こんな旅行を参考にすることは全くもって無意味であると、そこそこ胸を張って主張することができる。さらに言えば、他人の旅行を追体験するなどというかなり狂気じみた行為の対象になることも想定されない。他者に依拠した存在意義などに頼ることはできないのである。

 そういった文言を並べ立てておいて、今更この記事に存在意義があると確認するのも憚られはするが、そう確認しておかねばこの文章は道端に捨て置かれたタバコのゴミと大差ない存在としてしかこの世に残存しえないので、わざわざ確認しておくのをご容赦されたい。すなわち、この文章は、徹頭徹尾私自身のために書かれている。ブログとして世に公開する、そこそこの分量と継続性の保証された文章を最後までやり通す行為には、多少なりとも意義があると思われる。この文章が書かれているのは、まさにそういった動機のみに基づく。単刀直入に言って、この旅行記は、旅行記の体を借りた自己満足の大規模な発露であって、発露でしかありえないがゆえに、私は読者のためならんとてキーボードを叩くものではない。今この文章を読んでいるあなたに親切たらんとて文章を書いているわけでもない。尤も、こんなことは、この部分までこの記事を丁寧に読み進めてきた読者には手を取るようにわかると思われる。今更言い訳を尽くすつもりもないし、そもそも、ここまでこんな汚い文章を読んできた人にとっては大して関係ないのかもしれない。

 いずれにせよ、まえがきとして、こういった細かい、これを書くに至った経緯についていくらか記しておいた。以降この文章に対するあらゆるクレームは無効化される。ご承知おきを。

本文をはじめる前に

 この紀行は、番翁が2022年夏に実施した、最長片道切符を使った旅行について書くものである。本文の前に、番翁が参考にした各種サイトの紹介と、最長片道切符というものについて軽く説明を加えておく。

 まず、最長片道切符のルート決定ならびに各種規定の理解については鵺帝国さん内の最長片道切符の流儀とバリエーションのページを大いに参考にした。読者諸氏におかれても、根気よく読めば最長片道切符というものについて必要十分な知識を身につけられるものと思う。もっとも、けして短いというわけではない文章であり、わざわざ時間をかけて読破するのも相応に骨が折れると思われるので、簡略に説明をしておく。

 一般に、"切符"と世において呼称されるところのものは、すなわち「乗車券」と呼ばれる類と、「料金券」と呼ばれる類とに大別される。前者は、極めて簡潔に説明するなら、「走ったレールの距離に対してかかるお金」と言える。100km乗車すれば何円、150km乗車すれば何円、というふうに、どんな列車に乗ろうと必ず発生する運賃である。特徴として、この100kmとか150kmとかいうルートは必ず一筆書きでなければならない(例外多数)。

 後者は、同じく極めて簡潔に説明するなら、「自分が使った列車・設備に応じて追加でかかるお金」である。例えば、東京から大阪まで行くのに、わざわざ各駅停車や快速で行けば、この「追加でかかるお金」は不要となる。しかし、多くの人間がそうするように、東京から新大阪まで新幹線と呼ばれるたいへん速いことで知られる列車を利用すれば、その新幹線という列車の使用料金として、特急料金が発生する。

 長くなったが、"最長片道切符"とは、先に説明した「乗車券」の距離をなるべく長くしようという、およそ一般においては無価値と捉えられても反論のしようがない、至って奇特な試みである。先述したように乗車券のルートは一筆書きでなくてはならないから、日本国内の鉄道路線が有限である以上、必ず経路が最長となるものが存在するし、その経路は適切な手続きによって求められる。具体的に求まったルートについては先の鵺帝国さんのページを参照されたい。

 なお、事はそんなにうまくいかないもので、実際には最長経路が複数存在する。これはひとえに「規則の解釈」と「何をもって最長とするか」というこれまた一般においては微塵も重要でない流儀に起因するものであり、これまたやはり詳細は鵺帝国さんのページを参照されたい。

 私は、「IGR+実乗最長+新在同一」と呼ばれる流儀に従って実行した。IGRと新在同一についてはおよそ世間で最長片道切符を実行する人間の主流であると思われるが、実乗最長についてはやや珍しいかとも思われる。これは、券面でのkm数だけでなく、実際に乗る距離を最長にしようという流儀で、この流儀では、各種規定を使って合法的に一筆書きを逸脱しようとするのが特徴である。

 もっと噛み砕いていうならば、例えば、今あなたの手元に壺——それは合法的に取得したものであり、一切のカルト的宗教と関係性を持つものではない——があったとして、そしてそれをA, Bという2つの店で買い取ってもらうとしよう。A店では100万円で買い取ってもらえる。B店では99万9990円でしか買い取ってもらえないが、キャンペーンで、20円分の商品券がもらえるとしよう。壺自体の価値を高く評価しているのはA店であり、総合的に得をするのはB店である。もっとも、両者にそれほどの差はないから、もはやどちらを選んでも個人の自由であり流儀の範疇に含まれるということは再度強調しておかねばなるまい。

 要するに、そんな細かいところにこだわる必要性は、私に関して言えば薄いのだが、一応そういう約束のもと実行したのだということについては言及しておくべきかと思われたので、そのように言及しておく。

もくじ

 ここからは実際に、最長片道切符での旅の様子を書き連ねていく。記事が更新され次第、リンクを貼り付けていくことになるが、これに関しては全く私のやる気と空き時間に依存するから、過剰な期待をすることは極めて喜ばしくない。

 長くなったが、というより、長くしたが、ここまで来てこんな文章を読もうという気概のある方が、無事に最後まで読み続けられるかどうか、それとも私のやる気がなくなって見事に絶筆となるか、どちらがより現実的かに思いを馳せながら、ちまちまと書いていきたい。よろしくお願いします。